江戸の活気と起業家精神が交差する。宗像・赤間宿まつりに学ぶ「地域資産」の活かし方

抜けるような青空の下、石畳の通りに響く「さあ、いらっしゃい!」という飴売りの威勢の良い声。どこからか漂う、杉玉の瑞々しい香りと新酒の芳醇な余韻。

福岡県宗像市にある「赤間宿」が一年で最も熱く、そして美しく輝く「赤間宿まつり」へ行ってきました。今回は、この場所が持つ「歴史資産」と「地場産業」がいかに現代のブランド発信力として機能しているか、その可能性をレポートします。


1. 宿場町のDNAを呼び覚ます「没入型」の空間設計

通りを歩いて驚かされるのは、その圧倒的な「没入感」です。白壁の街並みを背景に、刀を差した武士や時代衣装を纏った人々が平然と行き交う光景は、単なるイベントの枠を超え、歩行者天国という空間を「江戸時代の体験型テーマパーク」へと変貌させています。

SNSでの拡散性が求められる現代において、こうした「ハード(建物)」と「ソフト(人の営み)」が完璧に調和した空間は、若年層を含む幅広い層への強力なフックとなっています。


2. 「勝屋酒造」に見る、産業観光の爆発力

赤間宿のシンボル、赤煉瓦の煙突が見えてくると、そこには新酒を求める人々の長い列ができていました。

寛政二年創業の「勝屋酒造」による酒蔵開放は、まさにこの記事の核となる「歴史資産×新酒」の象徴です。重厚な梁の下で交わされる会話、しぼりたての新酒の瑞々しさ。地場産業が持つストーリーが、訪れる人々に「ここでしか味わえない体験」という付加価値を提供し、確かな経済波及効果を生んでいることを実感しました。


3. 出光佐三の原点――「人間尊重」が育まれた土壌

酒蔵の賑わいから少し歩くと、静かに佇む「出光佐三生家」に出会います。出光興産創業者であり、『海賊とよばれた男』のモデルとしても知られる佐三氏。

彼が終生大切にした「互譲互助(譲り合い、助け合う)」の精神は、この赤間の共同体文化の中で育まれました。かつての藍問屋としての商いの記憶と、現代に続く酒造りの情熱。これらは一本の線で繋がっています。この地は、単なる観光地ではなく、現代のビジネスパーソンにとっても「起業家精神の源流」に触れる聖地としてのポテンシャルを秘めています。


4. 住民の誇りが支える「おもてなし」の質

古民家を彩る立派な「ひな飾り」や、天井から降り注ぐような「さげもん」。これらは地域住民の方々が、代々大切に守ってきた私財です。

このプライベートな空間を一般に開放する協力体制こそ、シビックプライド(市民の誇り)の表れであり、来訪者が感じる「本物感」の源泉です。行政や商工会が守るべきは、この「住民の熱意」という見えない資産ではないでしょうか。


「赤間宿の未来に、期待を込めて」

まつりの喧騒が去った後、この通りを歩きながら考えたことがあります。この日感じた圧倒的な熱量を、一過性のイベントで終わらせるのはあまりにも惜しい。現場で肌に触れた「赤間宿のポテンシャル」を最大化するために、あえて未来への期待を込めて、いくつかの可能性を、ひとりの訪問者として考えてみました。

  • 平日の回遊設計: 古民家を活用したカフェやライブスペースはすでに動き始めています。この温かい取り組みがまつりの日だけでなく、日常の風景として根付いていったら——そんな未来を想像せずにはいられません。
  • デジタル・ストーリーテリング: 出光佐三のエピソードや酒造りの工程を、スマホ一つで体験できるARガイドなどを導入し、周辺観光(宗像大社など)との回遊性を高めることが出来ればと考えます。

赤間宿には、語られるべき物語がまだまだ眠っています。この歴史遺産をいかにクリエイティブに発信し、次世代へ繋いでいくか。その挑戦に、私も一人の発信者として伴走していきたいと強く感じました。

この記事が気に入ったら
いいねしてね!

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

目次