2025年8月の豪雨では、宗像市内各所で道路冠水や建物浸水が発生しました。「なぜ、自分の家が?」と感じられた方も多いはずです。
前回の第1回記事では、1時間110ミリという記録的な雨量と、深夜から始まっていた浸水の時系列をお伝えしました。第2回となる今回は、立地防災アドバイザーの視点から、釣川とその支流が抱える構造的な特徴を紐解いていきます。
宗像の背骨「釣川」とはどんな川か
まずは、私たちの街を流れる釣川のプロフィールを確認しましょう。
釣川は、宗像市吉留にある倉久山(標高223.9m)を源流とし、神湊で玄界灘へと注ぐ延長約16.3kmの二級河川です。流域面積は約101.5km²に及び、宗像市の大部分の雨水がこの川に集まる仕組みになっています。
支流は山田川・八並川・高瀬川・朝町川・大井川・横山川・四十里川・樽見川・阿久住川・吉田川など、大小20以上が合流しています。この「多くの支流が短い区間に流れ込む」という特徴が、大雨の際に大きな意味を持ちます。
「高低差8m」という構造的な弱点

釣川の最大の特徴であり、治水上の弱点と言えるのが「極端に緩やかな勾配」です。
水源から河口までの約16kmに対し、高低差は約8mしかありません。これは1km進んでも50cmほどしか下がらない計算になります。下流エリアはかつて海が入り込んでいた「旧入江」の地形であり、もともと非常に平坦なのです。
水は高いところから低いところへ流れますが、この高低差が少ないと一度に大量の雨が降った際に水がスムーズに海へ抜けません。いわば「出口が詰まりやすい構造」を天然の地形として持っているのです。
支流の同時多発的な増水と「バックウォーター現象」

釣川本川は緩やかですが、それを取り囲む山々から流れ込む支流は「短距離・急勾配」という真逆の特徴を持っています。
大雨が降ると各支流から一気に大量の水が釣川本川へと流れ込みます。すると以下のような連鎖反応が起こります。
まず本川の水位が瞬く間に上昇します。次に本川の水位が高くなりすぎると、支流からの水が本川に入れなくなります。そして市街地の排水路も河川の水位上昇によって機能が停止し、行き場を失った水が道路にあふれ出します(内水氾濫)。
これが釣川流域で発生する「外水(河川からの溢水)+内水(排水不能)」の複合氾濫構造です。
2025年8月豪雨で何が起きたのか
2025年8月の豪雨では、この構造的弱点が顕著に現れました。
特に被害が目立ったのは山田川・八並川・高瀬川といった支流の流域です。須恵地区などの山田川沿いでは、実際に河川の溢水や建物の浸水が発生しました。
また物理的な阻害要因も影響しました。橋脚に流木が引っかかることで水の流れが遮られ、河床に生い茂った草木が流量を低下させ水位をさらに押し上げる要因となりました。自然の地形要因にこうした現場の状況が重なることで被害が拡大したのです。
ハザードマップに載らないリスクを読み解く

現代の宗像市は市街地化が進み、かつて雨水を一時的に貯めていた「水田」が減少しています。これにより、地面に染み込まずに河川へ直接流れ込む雨量が増加し、遊水機能が低下しているという側面も見逃せません。
不動産を選ぶ際、多くの方がハザードマップを確認されるでしょう。しかし、マップで色がついていない場所なら絶対安全というわけではありません。
支流との位置関係はどうなっているか。その土地の過去の利用履歴(旧入江や水田跡地など)はどうか。周囲よりもわずかに低い「微地形」になっていないか。
こうした「地形の癖」を読み解くことこそが、真の防災につながります。地形図や地理情報を活用した土地診断の視点から見ると、数字だけでは見えないリスクが浮かび上がってきます。
まとめ
宗像市の美しい自然の象徴である釣川は、同時に「水が抜けにくい」という宿命を背負った川でもあります。この構造を理解しておくことは、この街で安心して暮らすための第一歩です。
次回、第3回では「釣川流域の地形と土地リスクをさらに深掘り」して解説します。「わが家の周りは大丈夫かな?」と少しでも不安に感じた方は、ぜひ次回の更新もお待ちください。
【免責事項】
本記事に掲載している情報は調査時点のものです。河川・地形・ハザードに関する最新情報は国土交通省・福岡県・宗像市の公式サイトにてご確認ください。また本記事は情報提供を目的としており、特定の地域や物件の安全性を保証するものではありません。
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