家を壊して土地だけにしてから売る。一見、話が早いように見えます。買う側にとっては、古い家が建っているより更地のほうが使いやすいはずだ、と。
ところが、壊した瞬間に動き出すお金が3つあります。しかもそのうち2つは、あとから戻せません。
この記事では、解体を決める前に知っておくべき3つを、順番に説明します。専門用語はその都度かみくだきます。
結論から言うと
家を壊して更地にすると、次の3つが起きます。
- その土地の固定資産税が、翌年から最大6倍になる
- 解体費は「売るために壊した」と認められれば経費にできるが、順番を間違えると認められない
- マイホームを壊して土地だけ売ると、3,000万円の特別控除が原則使えなくなる
1つ目は毎年の出費、2つ目は売るときの税金、3つ目は売却益そのものに関わります。
そして3つとも、判断の期限が「壊す前」にあります。壊してから気づいても、家は戻りません。
【1】固定資産税は、6分の1から1に戻る
土地の固定資産税には「住宅用地の特例」という仕組みがあります。上に人が住む建物が建っている土地は、税金を計算するときの金額(課税標準額)を軽くしてくれる制度です。
総務省の説明によると、200平方メートル以下の住宅用地は、課税標準額が価格の6分の1になります。200平方メートルを超える部分は3分の1です。
これが、建物がなくなると使えなくなります。更地は「住宅用地」ではないからです。
具体的な金額で見てみます。話を分かりやすくするため、200平方メートルの土地で、固定資産税の評価額が1,000万円だったとします。
| 課税標準額 | 年間の固定資産税(税率1.4%で計算) | |
|---|---|---|
| 家が建っている | 約167万円(6分の1) | 約2.3万円 |
| 更地にした | 1,000万円(そのまま) | 14万円 |
差は年間で約11.7万円です。1年で終わりではありません。売れるまで、毎年かかります。
ここで正直に補足します。実際の税額は、この計算どおりにはなりません。固定資産税には「負担調整措置」といって、急に税負担が跳ね上がらないように段階的に上げる仕組みがあるからです。だから「必ず6倍」ではありません。
ただし、方向は変わりません。更地にすると、住宅用地として軽くしてもらっていた分が、翌年から効かなくなる。これは確実に起きます。
タイミングも重要です。固定資産税は毎年1月1日時点の状態で決まります。12月に壊せば翌年から、1月に壊せばその年はまだ建物があった扱いです。同じ「壊す」でも、1年分ずれます。
なお、市街化区域の土地には、固定資産税とは別に都市計画税もかかります。こちらも住宅用地は3分の1に軽減されていて、更地になると軽減がなくなります。合計すると、年間の負担はさらに上がります。
【2】解体費は経費にできる。ただし「順番」が条件
壊す前に、いくら残るか計算できます。
売却価格ではなく、手元に残る金額の話です。解体費・税金・控除が使えるかどうかで、結果は変わります。順番を決める前に、一度並べてみませんか。
LINEで相談する初回相談60〜90分。オンライン可。
事務所のご案内を見る ›
家を壊すのには、当然お金がかかります。この費用は、条件を満たせば売却の経費として扱えます。経費になれば、売却で出た利益から差し引けるので、税金が軽くなります。
国税庁のタックスアンサー(No.3255「譲渡費用となるもの」)には、経費として扱えるものの例が並んでいます。その中に、こうあります。
土地などを売るためにその上の建物を取り壊したときの取壊し費用とその建物の損失額
ここで大事なのは「土地などを売るために」という部分です。順番が決まっています。
- 先に「売る」と決めて、そのために壊す → 経費にできる
- 先に壊して、そのあと「売ろう」と決めた → 経費として認められない可能性が高い
同じ行為でも、決めた順番で扱いが変わります。そして、この順番はあとから作れません。壊した日と、売却を決めた日は、記録として残るからです。
実務では、先に売却の相談を始めて、売り方を決めてから解体に入ります。順番を逆にすると、解体費が丸ごと自分の持ち出しになることがあります。
解体費の金額は、建物の大きさや構造、前面道路の広さ、使っている石綿(アスベスト)の有無などで大きく変わります。同じ家でも業者によって見積もりが違う業種です。1社で決めず、複数から取ってください。
【3】マイホームを壊すと、3,000万円控除が原則使えなくなる
これが一番大きいかもしれません。
マイホーム(居住用財産)を売ったときは、売却益から最高3,000万円を差し引ける特例があります。売却で得が出ても、この範囲なら税金がかかりません。
ところが国税庁は、こう説明しています。
家屋を取り壊してその敷地だけを売った場合には、原則としてこの特例の適用は受けられません。
つまり、家を壊してから土地だけを売る場合は、3,000万円控除が原則として使えなくなります。
ここは誤解しやすいところなので、先に言っておきます。壊さずに家ごと売るなら、この特例は通常どおり使えます。 控除が使えなくなるのは「壊してから売る」順番を選んだときだけです。だからこそ、壊す前に一度立ち止まる意味があります。
ただし、全部がダメというわけではありません。次の3つをすべて満たせば、使えます。
- 家屋を取り壊した日から1年以内に、その敷地を売る契約をしていること
- その家屋に住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ること
- 取り壊してから売る契約をする日まで、貸すなど他の用途に使っていないこと
ここで現実的な問題が出ます。1つ目の「1年以内に契約」です。
解体してから1年以内に買い手がつかなければ、控除は使えません。土地が売れやすいかどうかは、壊してみないと分かりません。そして、いったん壊すと元には戻せません。
「早く売りたいから壊す」という判断が、「売れないまま、控除も失う」という結果になる可能性が、ここにあります。
空き家だった家なら、もう1つ別の制度があります
ここまでは「自分が住んでいた家」の話でした。実家を相続した、長く誰も住んでいない。そういう家を壊す場合は、同じ「解体」でも制度が2つ重なります。
建っているのに、特例が外れていることがある
住宅用地の特例は、家が建っていれば必ず使えるわけではありません。
空家等対策の推進に関する特別措置法(空家法)では、著しく危険・有害な「特定空家等」と、放置すればそれになるおそれのある「管理不全空家等」の2段階が定められています。市町村長が勧告を出し、それでも措置が取られないまま1月1日(賦課期日)を迎えると、翌年度から住宅用地の特例が外れます。
つまり、家が建ったままでも、6分の1が使えなくなる。解体する前から税負担が上がっている可能性があります。まず市の窓口で、その家が勧告を受けていないかを確認してください。
さらに、国の指針には、使用の見込みがなく取り壊しを予定している場合など、今後人の居住の用に供される見込みがないと認められる家屋の敷地は、そもそも特例の対象にならない、という考え方が示されています。取り壊しを決めた時点で、まだ建っていても特例が外れる場合がある、ということです。
制度は令和5年12月から動いています
管理不全空家等は、令和5年12月13日施行の改正で新設されました。それまでは「特定空家等」しかなく、危険な状態になってからでないと行政が動けませんでした。今は「傷み始め」の段階で指導・勧告が入ります。
運用も動いています。国土交通省の調査では、管理不全空家等への指導は令和5年度が666件・勧告0件。令和6年度は指導2,545件・勧告378件でした。制度初年度に実例がなかった勧告が、2年目から出ています。
令和8年9月3日には、国の基本指針とガイドラインも改正されました。判断の基準そのものは変わっていませんが、所有者を特定するための情報の入手先が広がり、勧告後に新たな措置が必要になった場合は指導からやり直さず勧告から始められるとされました。手続は速くなる方向です。
相続した空き家には、別の3,000万円控除がある
ここが一番間違えやすいところです。
【3】で書いたのは「居住用財産の3,000万円控除」。自分が住んでいた家を壊すと使えなくなる、という話でした。
これとは別に、相続した空き家には「空き家の発生を抑制するための特例措置」があります。被相続人が住んでいた家とその土地を相続した人が、相続開始の日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ると、3,000万円を控除できます。
そしてこの特例は、壊してから売っても使えます。令和6年1月1日以降の売却なら、先に売って、売った年の翌年2月15日までに取り壊すのでも構いません(買い主の協力が必要です)。適用期限は令和9年12月31日までです。
条件もあります。相続の直前まで被相続人がその家に住んでいたこと、相続人が3人以上いないこと、売却価額が1億円以下であること、建物が耐震基準を満たすか、耐震改修または取り壊しをすること。細かい判定は契約前の確認事項なので、当てはまりそうだと思ったら、壊す前に相談してください。
「壊すと3,000万円が消える」は、制度を1つしか見ていないときの判断です。 相続した実家なら、使える方が残っている可能性があります。
最後に、「6倍」という表現について
よく見る「勧告されると固定資産税が6倍」という説明について、正確にしておきます。
6分の1が外れるので、計算上は6倍になります。ただし実際の税額は、負担調整措置(急に上がらないように段階的に上げる仕組み)や、市町村の条例による減額で変わります。国の指針もその旨を注記しています。
ですから「6倍」は上限の目安と考えてください。実際いくらになるかは、課税明細書を持って市の税務担当に聞くのが確実です。
壊したあとにも、期限がある
もう1つ、実務的な話をします。
建物を取り壊したら、1か月以内に「滅失登記(めっしつとうき)」という手続きが必要です。登記簿から、なくなった建物の記録を消す作業です。不動産登記法第57条で定められていて、怠ると10万円以下の過料の対象になることがあります。
放っておくと、土地を売るときや、買い手がローンを組むときに話が止まります。解体業者がやってくれる場合もありますが、義務があるのは所有者です。契約のときに、誰がやるのかを確認してください。
壊す前に、売り方を先に決める
3つを並べると、共通することが見えてきます。
固定資産税は、壊した翌年から上がる。解体費が経費になるかは、売ることを先に決めたかで変わる。3,000万円控除は、1年以内に売れるかどうかにかかっている。
どれも「壊す前に、売り方を決めておく」ことで変わります。壊してから考えると、選択肢が減ります。
更地が向いている場合もあります。買う側が建築会社を決めていて、古い家があると却って邪魔になる場合や、建物が傷んでいて残す選択がない場合です。壊すこと自体が悪いのではありません。順番の問題です。
明日やること
- 壊す前に、その土地の固定資産税の通知書を見てください。今、年間いくら払っているかが分かります。家がなくなった後の金額は、市役所の資産税の窓口で相談すれば概算を教えてもらえます。空き家なら、同じ窓口で「勧告が出ていないか」も確認してください。
- 解体費の見積もりは、1社で決めず複数から取ってください。金額の差が大きい業種です。
- 3,000万円控除を使う予定があるなら、解体の前に売却の相談を始めてください。順番を逆にすると、戻せません。
解体の見積もりが出たあとでも、遅くありません。
まだ契約していなければ、順番を変えられます。家を壊す前に、売り方を一緒に決めましょう。
LINEで相談する宗像市・福津市・古賀市の売却相談。
事務所のご案内を見る ›
出典
- 総務省「地方税制度|固定資産税」 https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_zeisei/czaisei/czaisei_seido/150790_15.html (2026年11月5日取得)
- 国税庁 タックスアンサー No.3255「譲渡費用となるもの」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3255.htm (2026年11月5日取得、令和8年4月1日現在法令等)
- 国税庁 タックスアンサー No.3320「マイホームを取り壊した後に敷地を売ったとき」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3320.htm (2026年11月5日取得、令和8年4月1日現在法令等)
- 法務省「被災した建物の滅失の登記について」(不動産登記法第57条の条文引用) https://houmukyoku.moj.go.jp/shizuoka/page000001_00511.pdf (2026年11月5日取得)
- 国土交通省「空家等対策の推進に関する特別措置法の一部を改正する法律(令和5年法律第50号)について」 https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk3_000138.html (2026年11月5日取得)
- 国土交通省「空き家の発生を抑制するための特例措置」 https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk2_000030.html (2026年11月5日取得)
- 東京都主税局「「特定空家等」または「管理不全空家等」に該当すると土地に対する固定資産税・都市計画税の税額が高くなる場合があります」 https://www.tax.metro.tokyo.lg.jp/kazei/real_estate/kotei_tosi/tokuteiakiya (2026年11月5日取得)
免責
この記事は、一般的な制度の説明です。個別の土地・建物についての税額や、特例が使えるかどうかの判断は、評価額・面積・住まい方・売却の時期によって変わります。実際の判断は、税務署または税理士、市役所の資産税担当窓口にご確認ください。
記載内容は2026年11月5日時点の法令等に基づいています。

