空き家バンクに登録すれば、市が買い手を探してくれる——そう思われている方が少なくありません。
結論から書きます。空き家バンクは、物件情報を掲載する場所です。売買の交渉や契約を代わりに進める仕組みではありません。そして、掲載しただけでは動きません。
ここでつまずく方が多い3点を、順に整理します。
誤解1:登録すれば、市が売ってくれる
空き家バンクは、自治体が所有者から物件の情報を受け取り、利用希望者に提供する制度です。宗像市にも「空き家・空き地バンク」があり、物件登録の申込書が用意されています。
ただし、どこまで自治体が関わるかは、市によって差があります。
- 福岡市:市が登録事業者の中から輪番制で媒介事業者を選任する
- 福岡県空き家バンク(ふれんず):市町村と連携している不動産事業者が掲載する
- 宗像市:所有者が市に物件情報を登録する(交渉・契約は媒介業者)
つまり、「登録したら終わり」ではなく、登録したあとに誰が動くかが決まっていないのが実態です。ここが抜けたまま登録すると、掲載だけが残ります。
誤解2:掲載すれば、買い手が来る
全国の空き家バンクを経由した成約は、約28,000件(国土交通省の集計/令和8年9月末時点)というデータがあります。全国の空き家の数に対して、ごくわずかです。
そして宗像市は、空き家率10.70%(5,040戸/総住宅47,100戸)。全国平均13.8%を下回ります(令和5年住宅・土地統計調査)。
これは良いことのように見えますが、裏返すとこうです。空き家バンクに出てくる物件は、市場に流通しにくかったものが選別されて残っている。だから「出せば売れる」ではなく「出しても動かない物件が集まりやすい」場になっている。
一方で、機能している自治体もあります。例えば群馬県桐生市では、平成27年11月末時点の公表データで登録総数230件(土地を含む)、成約93件という実績がありました。運用の設計次第で結果は変わるということです。
【ご相談】
空き家バンクに出すか、一般の媒介で出すか。迷ったら、うちの場合はどうなるかだけ聞いてください。
誤解3:値段を下げれば動く
動かない理由は、価格だけではありません。
全国の自治体を対象にしたアットホームの調査(「空き家」取引等に関する実態・意識調査・2026年1月)では、空き家所有者が手放せない理由として「解体やリフォーム、残置物の撤去などの費用を要する」が最多(43.4%)でした。
つまり、買い手の側から見ると、表示価格+解体費+残置物の撤去費が実質の取得コストになります。値段を下げても、この費用が見えていないと、買い手には「高い」ままです。
だから、空き家を出す前にやることは値下げではなく、この3つを数字にすることです。
- 解体する場合の概算(建物の構造・面積・接道で変わる)
- 残置物の量と撤去の概算
- その土地に、そもそも再建築できるか(接道・用途地域・セットバック)
ここが揃うと、「安くしないと売れない」ではなく「いくらなら買えるか」の話に変わります。
では、空き家バンクは使わないほうがいいのか
そうではありません。使い方が違うだけです。
| 目的 | 空き家バンク | 一般の媒介 |
| 広く知られているか | ○(自治体サイト・移住希望者に届く) | ○(ポータルで広く届く) |
| 価格の交渉 | △(業者が入るかは市による) | ○ |
| 買い手の属性 | 移住・定住希望者が中心 | 地元の実需も含む |
| 売れ残ったときの扱い | 掲載が残る | 出し方を変えられる |
併用が基本です。ただし、併用するなら「なぜ動かないのか」を先に切り分けておく。切り分けずに両方に出すと、掲載期間だけが延びます。
まとめ
- 空き家バンクは掲載の場。売る仕組みではない
- 自治体の関わり方は市によって差がある
- 宗像市の空き家率は10.70%で全国平均を下回る。出てくる物件は選別されている
- 動かない理由の最大は価格ではなく解体・残置物の費用
- 出す前に、解体費・残置物・再建築の3つを数字にする
【ご相談】
空き家のまま迷っている段階で構いません。売るかどうかを決める前でも、費用と選択肢は整理できます。無料相談だけでも大丈夫です。
出典
- 宗像市「空き家・空き地バンク物件登録申込書」(宗像市空き家・空き地バンク実施要綱 第4条1項)
- 福岡市「福岡市空き家バンク 制度概要」
- 福岡県空き家バンク(ふれんず)
- 宗像市の空き家数・空き家率(令和5年住宅・土地統計調査)
- 国土交通省 空き家バンク集計資料(令和8年9月末時点)
- 桐生市の実績データ(平成27年11月末時点の公表資料)
- アットホーム「空き家」取引等に関する実態・意識調査(自治体向け調査・2026年1月)
免責
本記事は、公開時点で公表されている制度・統計に基づく一般的な情報提供です。空き家バンクの運用は自治体ごとに異なり、内容は変更される場合があります。個別の物件の評価・売却の可否を保証するものではありません。

